小夜子「あの子は数学が苦手だから、優人君教えてあげてね
 そんな他愛ない会話をしていると、急に優人君が黙りこんでしまった。
 今まで自然に会話してたのに、不思議に思って顔を覗き込むと、避けるように横を向いてしまう。
小夜子「どうしたの? 優人君……」
 訳が分からない私は、優人君の顔を見てはっとした。
 何も意識しないで話していたが、その顔はいつの間にか上気して真っ赤になっている。
小夜子「ホントにどうしたの……? 顔が真っ赤よ……」
 私には、優人君の真意が分からず、急に真っ赤になった顔を覗き込む。
優人「な、何でもないです……」
 そう言いながらも、背けてる顔でチラチラと目線だけはこちらを伺うように送ってきていた。
 優人君が送っている目線の先を見ると、そこには私の胸元がある。
小夜子「えっ……?!」
 V字に開いた服の胸元からちらりと見え隠れする乳房を、優人君は頬を紅潮させて覗いていた。
優人「ご、ごめんなさい……」
 私の驚いた様子を察し、優人君は下を向き呟くように言う。
小夜子「う、ううん、おばさんこそゴメンね、気をつけなくて……」
 駿ちゃんと同じ歳の子に胸元を見られるなんて、思いもしなかった事に動揺が走り、言葉がぎこちなくなっていく。
 しかし、顔を赤くしもじもじしている優人君の様子を見てると、可哀想になり怒る気になどなれない。
小夜子「紅茶のおかわりを持ってくるわね……」
 私は話題を変えるようにそう言い、ティーカップに手をかける。
優人「……たい……です……」
 小夜子「えっ……?!」
 その時、もじもじとしながら何かを言った優人君は、下を向き顔を上げる事もできない。
 小さな声で何か言った優人君の言葉は気にせず、私は優しく語りかけた。
小夜子「そろそろお年頃だだものね……今度から、おばさんちゃんと気をつけるから……」
 そう言いながら身を引こうとした時、優人君がはっきりとした声で言ってくる。
優人「もっと……もっと、見たいです……」
小夜子「も、もっとて……」
 自分の息子より子供じみて見える優人君から、そんな言葉が出るなんて、気持ちが動転してしまい一瞬胸が高鳴っ てしまった。



戻る